コロナと本

 「捨てるのも勿体無いので、引き取ってもらえませんか?」

 とは、古本屋を営んでいれば常にかけて頂くことばでしょうか。

 大変ありがたくもあり悩ましくもあるこの言葉。何事も例外があるにせよ、この言葉を頂いた場合、大抵はお断りする結果になります。特にご本人の蔵書ですとそう成ります。ご自身で特別価値があるとも思ってはおらず、捨てたいけど嫌な訳です。

 当方としては、一応内容を伺いますし、大体が大衆文学などが多いのですが、物になるのは勿論のこと引き取る訳ですし、ダメならその説明も欠かしません。この説明が大事だと思うのです。この会話から、相談もせずに捨てるつもりの予定の方が買い取れたり、本以外の買取に話が及ぶ事は珍しくありません。

 さて改めて思うのです。そもそも本を捨てるのは本当に勿体無いことなのでしょうか?

 もちろん本をそのまま他の方に読んでもらえるならば、それが一番です。友人に譲ろうが古書店を介してだろうが、それが一番でしょう。

 その上で、もう読まないのならば捨ててしまうのが理に叶っていると、最近は特に思う様になってしまいました。物を大切にすること、そうなのですが広い目で観ないといけないと思う様に成りました。良かれ悪しかれ時代はアメリカ型資本主義です。消費文明です。

 出版の世界ももちろん商業ベース。低コストで大量販売する潮流に乗った結果、原稿はデータ化されオフセット印刷から網代綴じの製本と、いわば機械的な工業製品化に至っているのです。今時、万年筆の作家さんは居るのでしょうか?

 新刊が売れないと経済は回りません。活版印刷と違って、在庫調整も発行部数も自由度があります。原稿がデータだから、一時絶版しても容易に復刊できます。今読まないならもう捨ててしまえ!とした方が場所を取らないなど、効率が良いかもしれません。そして、、、

 原稿がそもそも電子化した今日、そのまま電子書籍として出版するのが環境負荷が少ない訳です。どうしても手にとって使い回すと言う性質上、今、図書館では接触感染を恐れて閉鎖を余儀なくされています。本にとってもコロナ受難です。

 アフターコロナで、電子書籍の利用が一気に加速化される様な気がしてなりません。

店舗情報

前の記事

GWに突入?
店舗情報

次の記事

時短営業します。