「新しい資本主義」への懸念
マグナム44のフォトグラファーの写真集を持っていくよという電話に起こされました。最近色々と画集を持ってきては、好みのハリウッド女優のDVDを探しに来られます。年金生活ゆえにお金を使わずに楽しみたいという訳です。大量に持っていた美術書は、家の建替え時に店主も知る某書店に片付けてもらったそうで、手元の本はそう多くありません。
ところがその残した画集などを換金するにも、新版が出ていたりなどして当時の価格で評価することは出来ません。その一方で、探すDVDはプレミア価格になっていてなかなか上手いことには成りません。物自体の価値は普遍的なものがありますが、ネットでの情報社会の渦中では、移ろう需要の流行り廃りが敏感に価格に反映します。
そんな訳で少々揉めることもあります。そのような折に往年の文芸評論家氏がやって来られました。探求の2冊をお調べしたところ、こちらもご予算をはるかに超えるプレミア価格です。そのうちの1冊など、後に文庫版が出ている事をご存知なかったのですが、そのほうがはるかに高額で3万円以上もしたりしてお互いに顔を見合わせて卒倒しました。
そこそこ普通の暮らしがしたいのですが、普通とは何ぞやと改めて考えさせられます。岸田政権は、新しい資本主義を掲げて、ぶ厚い中間層を再構築するべく、再び池田勇人の「所得倍増計画」を引き合いにしています。分配が先なのかなどと与野党共々から攻められる一幕もありました。
何のことはありません。俯瞰してみれば、富める者から貧しい者へ再配分をしないと資本主義が持たないという話ですから、ピケティの論説そのものでしょう。ところが先をゆく米国社会では、さらに急進的に極左的管理社会に向かっています。
その本質は、従来の生産労働を忌避して海外の低賃金の国に依存し、一方でIT産業で先行し、IT社会そのもののレギュレーションを握ることに成功した者たちによる資本に富が集中した結果、一部の成功者と多数の労働階層の二極化にあります。そこにバイデン政権が掲げる寛容すぎる社会保障と、ワクチンやマスクによる行動制限が相まって、いわば飴と鞭の行き過ぎた管理に対する不満から暴動も生じているようです。
また中国では、共同富裕が言われ出して、鄧小平以来の先富論からの転換が始まっています。エバーグランデを見放し、不動産バブルが崩壊する状況は、一概に習氏の政敵潰しだけとは言えず、文革2.0と言われる様に共産主義への原点回帰でしょうし、米国の流れと行動を一にしているとも言えそうです。
つまり、日本も同様の潮流にあると言えそうです。「新しい資本主義」なるものがその実は共産主義という結果にならないように目を離してはいけないと思います。
今回、台湾のTSMCが熊本に半導体工場を持ちますが、深田萌絵氏の言葉を借りれば、台湾の半導体企業は外省人つまりその実態は中共です。台湾の親日の顔を利用した工作をかけられていると言えそうです。そこに国費4000億円を投下して、日本の半導体産業を再生するかの様な喧伝がされていますが、その実は2000人の移民さながらの労働者を迎えて、製品や技術は中共や人民解放軍に横流しされる結果になるやも知れません。
また半導体のほか太陽光パネルやEVなどもその原料としてリチウムが戦略物資となった今、大産出国の中国に依存する流れも明確です。この様な言わば仕掛けられた超限戦に対して岸田政権がどう対応するのか、「新しい資本主義」との関係においても一つの試金石と言えそうです。