改憲を触れ回るのは自民の選挙戦略でしょう

 連休も中盤になりました。商店街には散歩で訪れる方もあって、今どきは珍しくなった街の古本屋も覗いて行かれます。小石川からJRを乗り継いでやってきたご夫婦には、地下鉄南北線なら乗り換えなしの1本ですとお話ししました。南北線は、駒込、東大前、後楽園、飯田橋、市ヶ谷、四ツ谷、永田町、溜池山王、麻布十番、白金台、目黒、、、と都心部を串刺して東急目黒線に乗り入れから東横線に合流して横浜まで1本です。

 さて、今日は憲法制定の記念日、岸田さんからは自民党総裁としての立場から、「緊急事態条項」を創設するといった改憲への提言があったといいます。しかしながら、自由民主党は自主憲法制定が結党の一丁目一番地ですが、これまで国民投票にさえ至らないのは、本当は改憲する気がないのでしょう。

 ところが、ウクライナ侵攻が発生するに至り、そうも言ってられない事態ということで、あるいは朝日新聞の調査でも改憲の必要を感じている人が56%と過半数を超えていて、必要ないの37%と、これまでとは逆転現象が生じています。

 そもそも戦後の日本国憲法は、GHQでやっつけ仕事で起草されて、原文は英文であることも知られていますので、改めて日本人の手で起草されることは理想でしょう。しかしながら、諸外国と比べて簡単には改憲出来ない、改憲にコストの懸かる現状に於いて、本当にダメな憲法なのかよくよく考えねばならないでしょう。

 実際、多くの部分で明治憲法を継承していますし、新憲法制定に際して関わった日本人が譲らなかったことや、少なくとも取りようによってはそう解釈できるといった様な攻めぎ合いの痕跡も感じられますので。むしろ、改憲よりも必要なのは、この分野で絶対的な権威を振るう東大法学部系の憲法学が変わらなければならないと思うのは、自分だけではないと思います。

 そのうえで、今回の世界情勢については、改憲よりも周辺の法整備を見直す必要があるでしょう。自衛隊法や軍法裁判はもとより、例えば、ネットの不正アクセス禁止法の現行ではサイバー攻撃が出来ないなど、様々な法律が国防という観点から精査し直す必要があるそうです。思うに生存権はたとえ明文化されていなくても、自然法として当然の権利ですから、憲法九条が生存に伴う自衛権を制限することは出来ないという解釈は出来るでしょう。

 ですから実は憲法が現行のままであっても、有事を目前にして、改憲の必要はないとも考えられます。緊急事態は「公共の福祉」を広義にすれば乗り切れるかも知れません。急ぐべきは法律の方です。また、それが分からぬ岸田さんではないでしょう。つまり今回の憲法改正に対する喚起は、目的は別のところにありそうです。たぶん、参院選挙に向けて自民党への求心力としたいだけでしょう。