ご質問に答えます

 新刊発売日前の本を売っても良いのか、というお問合せがありました。

 まず先に結論から申せば、問題ないとなります。

 盗品や横領品を転売するのは犯罪ですから論外です。ここでは出版物を本と雑誌の2つに大別して補足します。

本について

 新刊書店の場合、出版社と特別の予定がない限り、入荷したものから順次、店頭に並べて売ります。都内近県は配送が近いため、特に都心の大型書店などは発売日前に売られるのが普通です。逆に遠方ですと発売日後に配本されることも少なくないです。

 多くの本はその奥付に、印刷日と発行日が記載されています。重要な書誌データですが、製作サイドでは製本から納品の過程における指標であり、営業サイドでは必ずしも発行日=発売日とはなりません。

 では何故古書店に?と思う訳ですが、発行日前に新刊として売られたものが読み終わって転売されたケースの他に、出版社や著者などから関係者に渡った贈呈本や、出版社自身が2次流通に譲渡したケースなど様々な事情があります。

 一例を挙げれば、某大手出版社の場合、長年にわたり刊行され続けている海外文学の文豪の名著について、その訳者に対して重版が出るたびに印税とともに永年の慣例で新刊が贈られています。もうお孫さんの代になっています。そして、その何十版も重ねた本ですが、全てが永遠に保管されるとは出版社も思わないでしょう。

 今でこそ常に作家さんに献本する出版社は減りましたが、その昔は、作家さんが転売すればタバコ銭の足しになるといった暗黙の了解もあった訳です。作家自身の著作とは限りません。書評を書いてもらいたいなど、営業の事情もあります。

 ここで最近主流のネット販売に関しては、アマゾンなどで例外があります。アマゾンはマーケットプレイスという古書販売の場を提供し、新刊と同居同然で本を販売しています。そのためアマゾン自身の利益を最大化するには、発売日前の本がマーケットプレイスで販売されることが思わしくありませんので、発売日を過ぎるまで出品登録が出来ない仕組みになっています。

 その一方で、先行予約販売でアマゾンは青田売り同然に売上を計上しているのですから、本当はアマゾンの方が責められても良いでしょう。出版界では、アマゾン上陸当初は各地の書店を守る意味で、発売日を遵守する様に申し入れたと思いますが、現在では売上も大きくまた先行予約で実売部数が想定できるため、ウインウインの関係でもあるでしょう。当てが外れ刷りすぎた本は直ちに2次流通で換金することも可能となっています。

雑誌について

 過去、少年ジャンプなどの早売りが問題となりましたが、裁判で出版社側が敗訴しています。雑誌はサイクルがあり、早く並べた店が売れる傾向があることから、紳士協定が結ばれていました。しかしながら例えば昔、家電は販売価格がメーカー側で定められ、そこに悪しき商慣習が横行していた様に、出版社と書店との力関係も問題になりました。その辺の是正を問う判決が出されました。

 更に現在では、新刊書店の減少と、変わってコンビニの台頭により、着荷したら直ちに並べる傾向にあり、出版社の希望はあるとは言え、流通の営業日いかんでの発売日となっているのが現状です。

 

赤羽

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